「いま“世界”に近いのは、東京より地方だと思う」元NewsPicks社長が再挑戦の舞台に「地方」を選んだワケ

「いま“世界”に近いのは、東京より地方だと思う」元NewsPicks社長が再挑戦の舞台に「地方」を選んだワケ

「複業×年収換算1000万」で、地方に新たな可能性を
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都心からの移住がブームになったり、ローカルに特化したメディアやコンテンツが人気を集めていたり…最近、“地方”がにわかに盛り上がっている気がしませんか

一方で、地方と言えば「ゆったり過ごす場所」というイメージも健在。キャリアアップや年収アップをしたいなら、やっぱり都心にいるべき…と考えている人も少なくないのでは。

そんなイメージに異を唱えるべく、ある“意外な人”が立ち上がりました。元・株式会社ニューズピックス代表取締役社長、坂本大典さんです

言わずと知れた経済メディア『NewsPicks』のトップを率いた坂本さんは、昨年同社を退職。新たな挑戦として、地方特化型のHRサービス「チイキズカン」を立ち上げました。

日本経済のほぼすべて(!)を知り尽くしているであろう坂本さんが、なぜ“地方”に目を向けたのか…?

そんな疑問をぶつけてきたところ…地方から始まる、坂本さんの大きな野望が浮き彫りになりました。

〈聞き手=石川みく(新R25編集部)〉

地方を「諦める場所」から「挑戦する場所」に

坂本さん

「チイキズカン」は2023年秋にローンチした、地方企業が都心部のプロ人材を採用するためのダイレクトスカウトサービスです。

坂本さん

地方で働くと「何かを失うことになる」と思われがちなんですよ。


年収はダウンして、出世ルートからも外れて、仕事のやりがいもなくなる。でも都心の喧騒からは抜け出せるから、疲れを癒しながらスローライフを満喫しよう…みたいな。

石川

正直、そういうイメージはありますね…

坂本さん

僕はそうではなく、地方にこそ刺激的で面白い仕事があると考えています。


たしかに、地方には課題があふれています。でもその逆境こそが挑戦心をかりたててくれるし、都心では知られていない魅力的な経営者もたくさんいる。


挑戦することにやりがいを感じる人にとって、地方ほど適した場所はないと思うんです。

坂本さん

地方を変える意思のある経営者と、都市で働く挑戦者を結ぶために、「チイキズカン」に掲載する求人には3つの条件を設けています。


まずひとつは、「年収換算*で1,000万円以上」を出せる企業であるということ。

*年収換算とは年間業務時間を2,000時間として換算した場合の年収

石川

1,000万!? 大きく出ましたね…!

坂本さん

「地方は給料安いよね」と思われがちですが、実は都心では考えられないほど大きな設備投資ができるくらい、経営が安定している企業もたくさんあります。


この条件を設けることで、「地方=年収ダウン」というイメージを改め、地方でも1,000万円出せる企業があると示したいと思ったんです。

石川

なるほど…ほかにはどんな条件があるんでしょうか?

坂本さん

もうひとつの条件は「複業でも働ける」ということ。


都市部の経営人材が、いきなり地方に移住するのはハードルが高いですよね。


だからこそ、複業や業務委託として地方と関われる新しい選択肢を創りたいと考えています。

石川

たしかに…「地方で働くなら移住しないとダメ」って雰囲気も若干あるし、複業はあまり聞かない気がします。

坂本さん

ただ、一般的な複業のイメージは、あくまで“本業のスキマ時間にやるもの”というか…ちょっとした作業を手伝って、お給料は数万円、みたいなケースも多いですよね。


「チイキズカン」ではそういった複業人材の募集はしていません。


稼働日数は少なくてもいいから、経営に近い領域のミッションにコミットしてもらいたいんです。


つまり…「内部人材として執行権を付与すること」。これが3つ目の条件です。

石川

内部人材というのは?

坂本さん

外部のアドバイザーとして参画するのではなく、会社の一員として肩書きと当事者意識を持つ人材を指します。


地方には優秀な経営者が多いですが、ともに事業を推進する人材が不足しているのが現状です。


だからこそ優秀な都市部の経営人材が、マネジメント権や決裁権などの権限を持ち、地方企業の成長を支援できる仕組みを創りたいと考えているんです。

坂本さん

株式会社チイキズカンは、山形県の庄内地方で街づくりに取り組む「ヤマガタデザイン株式会社」と共同で立ち上げた会社です。


ヤマガタデザインは、地域課題に向き合いながら優秀な人材を全国から採用しようとしている、言わばチイキズカンの“一番のお客さま”的な存在です。


そんなヤマガタデザインと一緒にこの取り組みを行うことで、「庄内でもできるなら自分達もできるはず!」と思っていただきたいんです。

石川

たしかに、当事者がいると納得感があります。

坂本さん

さらに、「チイキズカン」の取り組みを日本中に浸透させるために、古巣の株式会社ユーザベース(NewsPicksの運営元)と資本業務提携を結びました。


11月24、25日には、東京・八重洲で全国の有力企業50社が登壇する事業プレゼン型イベント「KAIKOKU2023」を共同開催する予定です。

イベント詳細はこちら

坂本さん

「チイキズカン」で地方の優良企業が都市部の優秀人材を採用することで、その人材が地方のコミュニティと接点を持ち、盛り上がる。


そこから新しいビジネスが生まれ、それがメディアに取り上げられることで、優秀な人材が地方に興味を持つようになり、さらに地方企業の採用が加速していく


まだまだ立ち上がったばかりの事業ではありますが…将来的にはそんな好循環を巻き起こすことで、地方を変えていきたいと思っています。

坂本さんが地方のポテンシャルに着目した“本当の理由”

石川

坂本さんは元々、NewsPicksのトップに立ってらっしゃったんですよね。


どうして地方に目を向けることになったんでしょうか?

坂本さん

よく聞かれるんですが…僕のビジョンはNewsPicksにいたときとまったく変わっていないんですよ。


NewsPicks時代から、「こんなことをやりたい」と社内で公言していた目標がいくつかあって。


そのなかでひとつ、志半ばで終わってしまったものがあります。

石川

どんな目標ですか…?

坂本さん

世界のリーダーと日本のリーダーをつなげたい」。


ダボス会議のように、日本の経営者が世界中の経営者と交わる機会を作りたいと思っていたんですが…コロナの影響もあり、思うように進められなくて。


でも、日本の経済回復のためには、本気で世界に出ていくしかないという想いは昔から変わっていません。


だからリスクを取ってでも自分で起業して、この目標に再挑戦してみようと思ったんです。

石川

ちょっと待ってください…地方どころか「世界」の話になってませんか?

坂本さん

はい。僕は今、世界に出られるポテンシャルが一番高いのは、日本の地方の会社だと確信しています。

石川

…!?

坂本さん

理由はいくつかあって…まず、地方の会社は一族経営が多いので、意思決定がシンプルです。


オーナーが若い段階から跡取りを意識して動いているので、視座の高い若手が経営に携わっていることも多い


そして先ほどお話しした通り、事業が安定していてキャッシュも潤沢です。食や観光、製造業など、海外進出しやすい産業が多いという特徴もあります。

石川

なるほど…そう聞くといろんな好条件が揃ってるんですね。

坂本さん

僕は去年の4月から地元・愛媛に住んでいて、「BLAST SETOUCHI」という瀬戸内の経営者カンファレンスを立ち上げました。


NewsPicksを辞めてからしばらくは、地元でニートをしていて(笑)。その期間に地方の経営者とたくさん話をしたんですが…話せば話すほど、「こんなに面白い会社がいっぱいあるんだ」と驚かされるばかりで。


一方で、地方の会社が世界進出を目指すにあたっての“明確な課題”も見えてきました。

石川

課題…というと?

坂本さん

社長は優秀だとしても、経営陣に多様性がないということです。


よくよく話を聞いてみると、採用のマインドが都心とは大きく違うのが原因で。


それこそNewsPicksの場合は、日本中から優秀な人材を集めていましたが…地方だと「地元で採用するのが当たり前」と思ってしまっているんですよね。


ここを支援して経営陣を多様化していくことが、そのまま地方企業の伸び代になる。そう思って、「チイキズカン」の立ち上げに至りました。

石川

そういうことだったのか…! 「チイキズカン」は世界を見据えたプロジェクトなんですね。

坂本さん

世界を見据えた取り組みの一環として今年9月に、台湾の国家発展委員会と連携してNewsPicksと一緒に『Japan-Taiwan Startup Summit 2023』を開催しました。


来年ごろを目処に、アジアの経営者と日本の経営者がガッツリ交流できるような場を作りたいと思っています。


そのためにもまずは、日本国内の垣根を崩すところからはじめていきたいですね。

すべての垣根を超え、もっと人が流動化する社会に

石川

最後に、「チイキズカン」はどんな人に使ってほしいですか?

坂本さん

便宜上「都心部のプロ人材(経営人材)」という言葉を使ってはいますが…


個人的な想いとしては、これを読んでくださった全員に複業をしてみてほしいと思っています。

坂本さん

先ほど「垣根を崩したい」と言いましたが…


都心と地方だけでなく、地方と地方、企業と企業、そして国内と国外…と、さまざまな垣根がありますよね。


僕はこれを全部崩して、もっと人が流動化する社会を作りたいんです


位置もカルチャーも離れた企業での経験は、1人ひとりの人生を必ず豊かにすると考えています。


みなさんが個人のビジョンを高く持ち、それを実現するための複業先をチイキズカンで見つけてもらえればと思っていますので…ぜひ、興味を持っていただけたらうれしいです!

「チイキズカン」は、「チイキズカン」は、地方から始まる、再び日本経済が復活するための壮大なプロジェクトだと判明。

地方から“世界”へ

そんなビジョンに共感した方は、まずは「チイキズカン」で複業に出会うところから、世界とつながるきっかけを作ってみてはいかがでしょう?

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