深刻化する介護の人手不足…日本で一番「人口減少」が進む秋田県で生まれた、win-winな解決策とは?

深刻化する介護の人手不足…日本で一番「人口減少」が進む秋田県で生まれた、win-winな解決策とは?

「海外人材活用」のハードルを突破!

2025年には、超高齢化社会を迎えると言われている日本。介護業界では、30万人以上の人手が不足すると予測されています。

ただでさえ人手不足が課題の介護業界は、この危機をどう乗り越えればいいの?

そんな難題に意外な解決策を見出したのが、日本一「人口減少・少子高齢化」が進んでいると言われている秋田県にある「あきた創生マネジメント」です。

同社が掲げるソリューションは「海外人材の採用」。とはいえ言葉も文化も異なる外国人の雇用は、それはそれでハードルが高そうな気も…?

さまざまな困難をどう乗り越えているのか、同社代表取締役の阿波野聖一さんに話を伺ってみました。

〈聞き手=石川みく(新R25編集部)〉

目前に迫る2025年問題…解決の糸口は“海外人材”にあった

石川

海外人材の採用って、言葉の壁や文化の違いがあって大変そうですが…

阿波野さん

受け入れコストや就労ビザの問題もあるので、ハードルが高いのは事実ですね。


そのせいで採用したいのに踏み切れないケースもあり…結果、慢性的な人手不足が続いて、時間外労働や休日出勤をせざるを得ない職場も増えています。


特に秋田は、日本一「人口減少・少子高齢化」が進んでいると言われている県。どうにかしたいけど対策は打てていない、というのが現状なんですよ。

石川

それは八方塞がりですね…

阿波野さん

そこで私たちが見出した解決策は、海外人材を対象にした「インターンシップ事業」です。


ビザの問題などで外国人雇用を断念していた事業所でも、インターン生として雇用することで働き手を確保できるんです。


現在は、ベトナムやインドネシアのさまざまな大学と提携し、受け入れ支援を行っています。

あきた創生マネジメントには、12人のインドネシア人スタッフがいらっしゃるそう(2023年3月現在)

石川

普通の雇用とは何が違うんですか?

阿波野さん

日本で働きながら大学の単位も取得できる「特定活用」という在留資格を活用しています。


海外の大学の教育課程の一環なので、実習生のモチベーションが高く、受け入れ費用も抑えられるのがメリットです。

※1人あたり1年間就労した場合のコスト費用面での比較

阿波野さん

そもそも、「外国人は安く雇える」というイメージが一般的に広がっていますが、実際は日本人を採用するよりも費用がかかるんです。

石川

そうなんですか?

阿波野さん

ただ、定着率や生産性、職場に与える影響などを考慮すると、メリットのほうが多いと考えていて。


今後も介護事業の人手不足は続いていくでしょうから、生き残るには介護人材のグローバル化は必須なんです。

単なる労働力ではなく「ともに学び、働き、生きる仲間」

石川

とはいえ、受け入れてもすぐに馴染んでいただけるわけではなさそうですよね?

阿波野さん

そうですね。海外人材を採用する大きなハードルのひとつが「雇用後の教育」です。


意思疎通や文化適応など、たくさんの課題があるので…日本人を育成するより、外国人を教育するほうが大変なのは、ある意味当然なんですよね。

石川

慣れてもらうまで、かなり根気が要りそうですね…

阿波野さん

それを解決するために、「あきた創生マネジメント」では人材を紹介するだけでなく、育成やコミュニティづくりまでサポートしています。


「紹介・教育研修・ビザ申請・生活支援」までを一括して支援し、人材を定着させるための環境を整えているんです。

阿波野さん

なにより、言葉も文化も違う彼らにイチから教えることは苦労も多いですが…そのぶん私たちの「人に教える・伝える」というコミュニケーションスキルも上がっていきます


それに、文化や価値観の違う彼らとの仕事や暮らしは、私たちの人生観も変えてくれるんです

阿波野さん

私たちは、彼らを単なる労働力とみなすのではなく、「ともに学び、働き、生きる仲間」として捉えています。


お互いが理解を深め、働きやすくなるためには、受け入れ前・受け入れ後の環境づくりが大切です。


だからこそ、受け入れる側の私たちで、多様な文化を受け入れる土台を作りたいと考えているんです。

石川

でも、インターンシップって期間限定ですよね? せっかく仲間になっても、長く働いてもらえないのでは…?

阿波野さん

たしかに、期間は「6カ月〜最大1年」と定められています。


ただ、1年就労すれば「高度人材」「特定技能」の在留資格を得ることが可能なので、もし、仕事や会社のことを好きになってもらえれば、インターン(体験型就労)から本格就労 “技人国” “特定技能”へ進むことができ、将来の人材採用につながります。

阿波野さん

インターン生は、まずは介護のスキルを習得し、経験を積む。期間満了になったら一度帰国し、大学を卒業したのちに再度来日してもらう、という流れです。


私たちは、そうして介護のスペシャリストを育成していくことに力を入れています。

重ねた“経験”が、日本に新しい価値をもたらす

石川

実際にインターン生として受け入れた実習生のみなさんは、どんな反応なんですか?

阿波野さん

日本でチャレンジしたい!」という意思を持って来てくださっているので、とても勉強熱心ですよ。


はじめは言葉や習慣の違いに戸惑ったりすることもありますが、日に日に笑顔が増えていくのがわかります。


日本人スタッフも、実習生の指導をはじめ、コミュニケーションを活発に行ってくれるので助かっています。

石川

逆に利用者のみなさんや地域の方々は、外国人が来ることに戸惑ったりはしないのでしょうか?

阿波野さん

その点は、あまり問題はなさそうです。


町内会で海外から来た実習生を紹介すると、「若い子が来た!」と喜ばれるくらいですから。


ご近所の方もおかずを分けてくれたりと、いい形で交流できていますよ。お互いに信頼関係が築けるよう、私たちもサポートしています。

石川

地域全体で受け入れ体制が整っているんですね…!

おふたりともいい笑顔だ…

阿波野さん

この活動を始めた当初は、予想外の事態も度々起こりましたが…


それらすべてが「経験」という価値につながっている、という手応えもありました。


経験を重ねることで、私たちは海外人材を受け入れる際のノウハウや知識を蓄積し、他の企業にも伝えることができます。


これによって、海外人材が将来の人材採用として身近になり、業界全体の未来が明るくなると考えております。

石川

秋田から好循環が生まれているんですね…!

阿波野さん

実習生にはできるだけ「またここに来たい」と思ってもらえるような環境を提供して、長期的に日本で働いてもらえるような土台づくりに取り組んでいます。


私たちの存在意義は、「人口減少社会において介護経営をリデザインをする」こと。


この経験を介護事業だけでなく、製造業や旅館業など、業種を問わずに活かしていきたい。そして、地域の未来に貢献していきたいと考えていますので…


人材不足に悩む介護・宿泊・製造業の企業さまはぜひ、私たちのインターンシップの受け入れ支援を頼っていただけたらうれしいです!

もはや他人事とは言えない介護。人材のグローバル化は、今後の介護業界の持続と発展に大きく関わっていきそうです。

このビジネスモデルが、業界全体のイノベーションになるはず。人手不足に悩む方はぜひ、新たなソリューションを活用してみてください!

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