世界の食糧問題を「昆虫」が救う!?  斬新なアイデアで“循環型社会”の構築を目指す、大分発の取り組み

世界の食糧問題を「昆虫」が救う!? 斬新なアイデアで“循環型社会”の構築を目指す、大分発の取り組み

ゴミ収集がきっかけで生まれたアイデアを実現!
企業ロゴ画像

大分県に拠点を置く「Oita GROWTH Ventures」。事業成長を志向している起業家・第二創業者の方を対象に、さらなる事業成長を支援するアクセラレーションプログラムです。

令和5年度には、5名の起業家が同プログラムに採択されたそう。個性豊かな5名の起業家たちの、取り組みや想いをご紹介!

今回登場するのは、株式会社Buzcycle 代表取締役 毛利 謙太さんです。

〈聞き手=森久保発万(新R25編集部)〉

「これを昆虫に食べさせたら…!」ゴミ処理場での“運命の出会い”

毛利さん

株式会社Buzcycleは、「ミールワーム」という昆虫を活用した事業を展開しています。


昆虫の力で、無駄のない循環型社会の構築を目指しているんです。

森久保

どうしてまた、「昆虫」で起業しようと思ったんですか…?

毛利さん

私は大学を卒業後、大阪府内の飲食店で働いていたんですが、家庭の事情で地元・大分県中津市に帰郷。


家の手伝いをする傍ら、高校生時代にアルバイトをしていた会社でゴミの収集・運搬業務に就きました。


毎日膨大な廃棄の食品を回収するなかで…今後タンパク源が足りなくなる未来が来ると心配されているにもかかわらず、膨大な食品が廃棄されていることに気づいて。


しかも、廃棄された食品はそのまま焼却処理されてしまう。そこに矛盾を感じるようになっていったんです。

森久保

今や「フードロス」は社会問題ですもんね…

毛利さん

この問題を解決できないかと考えているときにふと、廃棄された食品に群がっている昆虫に目がとまったんです。


そこで思いつきました。「ゴミを昆虫に処理させたら面白いんじゃないか?」って。


そこから、昆虫テック分野について海外の論文などを参考に独学で学び始め、実際に自宅でミールワームの飼育も開始。


2020年には株式会社Buzcycleを設立し、ミールワームの研究と事業開発を進めてきました。

森久保

“昆虫テック”という分野があるんですね…! 昆虫がどう食糧問題に関係してくるのでしょうか?

毛利さん

世界の人口が増加し、タンパク質不足が起きると言われています。その根本的問題は、タンパク質を育てるための飼料や、肥料が不足していることにあります。


私たちは、昆虫を人間食として食べようというのではなく、昆虫を、不足している飼料や肥料として活用し、タンパク質不足の危機を回避することを目指しています。

森久保

ちなみに、「ミールワーム」というのはどんな昆虫なんですか?

毛利さん

ミールワームとは、ゴミムシダマシ科の幼虫のこと。


魚粉と同じく高タンパクで、必須アミノ酸も豊富。廃棄された野菜の切り屑などのゴミを好んで食べる点に着目し、「これならいけるんじゃないか?」と思って。


最終的には、養殖用飼料としての機能性においてはミールワームが最も優れているという論文を読んだことが決め手となり、ミールワームを選びました。

昆虫の力で、持続可能な生産モデルを構築したい

森久保

ミールワームを活用して、どんな事業を行っているんでしょうか?

毛利さん

現在はおもにペットの飼い主やペットフード販売業者に対して、ペット用飼料としての生きたミールワームや乾燥させたミールワームの加工・販売を行っています。


さらには農作物の生産者や肥料販売業者に向けて、ミールワームの糞を原料とした肥料の製造・販売の準備も進めるなど、昆虫の持つ可能性をどう活用・定着していけるか研究しつづけているんです。

森久保

ちなみに、ミールワームの飼料とかはどうしてるんでしょうか…?

毛利さん

地場企業などにご協力いただき、酒造から出た焼酎の残りかすや、きのこ農家から仕入れた廃菌床などを活用させてもらっています。


飼料原料の高騰を回避し、国内で生産を完結できるよう、今後もさまざまな資源の活用を検討しています。


特に、ミールワームは地元・大分の水産養殖業を支える材料になりうるのでは? と思っていて。


その共同開発を行える研究機関や実証実験を行える漁業関係者とのつながりを強化したいと思い、各関係機関との意見交換などをさせていただいている最中です。

毛利さん

ミールワームは、人間が廃棄した食糧などをエサとして生産できるため、廃棄物燃焼処理の際に発生するダイオキシンやCO2などの化学物質を大幅に削減できます。


また、畜産・水産養殖業の飼料としてミールワームなどの昆虫を活用することで、世界人口の増加によって今後起きうる深刻な食糧不足の問題にも対処できる可能性を秘めています。


今後の目標は「昆虫の可能性で人類に貢献すること」。


昆虫を活用した持続可能な生産モデルを定着させ、次世代の子供たちの未来を守っていきたいです。

「Oita GROWTH Ventures」で起きた心境の変化

森久保

毛利さんは、大分県の起業家を対象に、さらなる事業成長を支援している「Oita GROWTH Ventures」のプログラムを受講されたと聞きました。


受講してみて、心境の変化などはありましたか?

毛利さん

このプログラムにエントリーしたきっかけでもあるんですが…4期目を迎えて感じるのは、結局1人でできることはほとんどないということです。


これだけ多くの方にアドバイスをもらえる機会もそうないですし、そこを一番求めていたので、これからもご指導いただきたいと思っています。

毛利さん

実は最近、プレゼンをしてもワクワクしない自分がいたんです。


元々はワクワクから始まった事業のはずだったのに、事業として成長していない、ずっと同じ場所にいるという焦りを感じていました。


でも、「Oita GROWTH Ventures」のメンタリングを受けるなかで、自分の凝り固まっていた考えをほぐすことができ、事業を整理することができたんです。


今は、”昆虫の可能性で人類に貢献したい”という原点に立ち戻れたと思えたので、現在はその第1フェーズと捉えています。


今後はさらに、人類が直面している環境問題や食糧問題に対して昆虫を使うことで、自分が本当に目指す世界を現実化したいと思います。

大量の食糧が廃棄されている一方で、世界では食糧が不足しているという矛盾。大分生まれの昆虫テック事業が、この問題に解決の一手を投じてくれるかもしれません…!

株式会社Buzcycleも採択者の一人である、大分県アクセラレーションプログラム「Oita GROWTH Ventures」では、2023年3月1日(金)に成果発表としてOita GROWTH Ventures DEMODAYを開催予定。

ご興味のある方は、ぜひ公式HPをチェックしてみてください!

この記事をシェア
あなたの企業トピックスを新R25で発信しませんか?